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執筆者の写真Akihiro Ando

プラシーボ効果の研究

以前のブログ記事でプラシーボ効果とノーシーボ効果を紹介しました。

 

今回は1つの研究を紹介し、人間の「思い込み」がいかに強力かを解説していきます。

 

Dr. Kaptchuk というハーバード大学医学部の先生で、

 

プラシーボ効果に関する多くの論文を書いている先生が関与した研究です。


文献へのアクセスはこちら

 

 

片頭痛に対して、治療薬と偽薬がどのような効果を及ぼすかが検証されました。

 

この研究は、二重盲検法が用いられた前向きコホート研究です。

 

研究のデザインとしては優れているものと思います。

 

結果を知ってから、「なぜそうなったか」を調べる後向き研究と違い、

 

「これから、こんなことをするけど、どうなるのかな?」

 

と検証する前向き研究は、研究者が意図的にデータを取捨選択する

 

機会を抑制することができるので、バイアスを軽減することができます。

  

 

66名の患者さんがそれぞれ経験した、連続した7回の片頭痛発作を記録します。

 

1回目は「その患者さんの通常の片頭痛発作」を記録するために、

 

お薬を使わずに2.5時間後に痛みの状態を記録してもらいました。

 

続いての6回の片頭痛発作に対しては、毎回異なったお薬を服用してもらい、

 

1回目と同じように2.5時間後に痛みの状態を記録してもらいます。

 

 

6つの異なったお薬は、実は成分としては2種類だけです。

 

一つは片頭痛の治療薬、もう一つは偽薬です。



しかし、それぞれラベル(記載)に工夫が施されています。

 

①「治療薬」と書かれた治療薬

②「偽薬」と書かれた偽薬

③「治療薬または偽薬」と書かれた治療薬

④「治療薬または偽薬」と書かれた偽薬

⑤「治療薬」と書かれた偽薬

⑥「偽薬」と書かれた治療薬

 

 

66名の患者さんで、計459回の偏頭痛発作が記録・解析されました。

 

すると、筆者らは2つの驚くべき結果が確認されたと報告しました。

 

 

1.「偽薬と書かれた治療薬」は、「治療薬と書かれた偽薬」と、

 

   同程度の効果しかなかった。

 

  (厳密に言うと、偽薬と書かれた治療薬の方が効果は高かったが、

 

   その差に「有意差」は認められなかった)

 

 

2.「偽薬と書かれた偽薬」を使用した患者でも痛みが平均 30.9% も改善をしていた。

 

   この効果は、「偽薬と書かれた治療薬」を服用した時の改善効果の

 

   6割程度も改善をしている。



偽薬と知っていて、偽薬を飲んでも、片頭痛の痛みが改善してしまうなんて

 

不思議な話ですよね。

 

痛みの研究はよく、プラシーボ効果の影響を受けやすいことで知られています。

 

しかし、プラシーボ効果は痛みだけでなく

 

血圧、血糖、脈拍、呼吸など、体の様々な機能に影響を及ぼします。

 

だからどんな研究でも、二重盲検法ランダム化比較試験が求められるのです。

 

 

紹介した研究では、痛みが偽薬で改善しました。

 

しかし、これを実際に臨床で患者さんの治療として取り入れることができるのか?

 

次のブログでこの問題を取り上げてみようと思います。

 

 

原因不明の痛みや違和感、舌痛症、非定型歯痛、非歯原性疼痛など、

 

他の医院では「精神的なものだ」「原因不明だ」「異常がない」

 

などと言われてしまう可能性がある症状でお困りの方は、

 

あんどう歯科口腔外科までご相談ください。

 

 

福岡でも1〜2ヶ月に1度くらいの頻度で診療をしています。

 

2025年には、名古屋と大阪でも診療を開始する予定です。

 

東京まで来院することが難しい方も、いずれかの都市で受診が可能であれば

 

ひとまず、当院までお問い合わせください。

 

 

あんどう歯科口腔外科:www.ando-pain.jp



参考文献

 

 

 

 


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